絵だけを見るためには、乱暴に言ってしまえば額縁は必要ありません。しかし、複製品に「額縁がない」と気付くということは、実際の絵には「額縁がある」ということを、逆に気づかせてくれているとも言えます。絵といえばただの絵になりますが、そこに額縁があるかないかで、作品の持つ印象が大きく変わります。額縁はそもそも、作品を構成するためのひとつの要素です。絵画を保護することはもちろん、装飾する(演出をする)という意味でも、作品に与える影響は小さくありません。作品を活かすことも、逆に殺してしまうこともあるのです。美術館に行ったときには、絵だけを見るだけではなく、そこにどんな額縁が使われていて、作品にどんな効果を与えているのかを考えてみると、また違った作品の楽しみ方ができるでしょう。