エルコラーノのフレスコ画の黒い木枠には、特段、装飾的な要素は見当たらないそうです。この木枠が意匠的なものとも考えにくいといえます。移動のときに壁画の形状を一時的に保って保管もするためなら、木枠は道具でしかないかもしれません。絵画を保護したり移動するためにはとても機能的です。けれども、この黒くなった木枠がに木目や木の色が美しいとか装飾を兼ねていたとも考えられます。単に移動のためだけでなく、現代の額縁のように絵画と一体化して絵画を壁面から独立した状態を保つために装飾したものだとしたら、額縁や額装の歴史を考えたとき、このポンペイやエルコラーノにまでさかのぼって起源として考えるべきだという人もいます。一方で研究者のほとんどは、中世の聖堂の祭壇に置かれたイコンやゴシック時代の祭壇画を縁取る額縁を原点としています。